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f1 = 544.2 Hz (pre-stressed)


f1 = 74.78 Hz (unstressed)


Effect of Initial Membrane Stresses on Mode Shapes of Shell Structures
シェル構造物のモードシェイプに対する初期の膜応力の影響

以前の ニュースで、円筒形のシェル構造物の周波数とモードシェイプについて試しました。今回のニュースでは、円周方向と長手方向に対する初期の引っ張り応力の周波数やモードシェイプに対する影響を紹介します。シェル構造物の形状、境界条件、材料特性は以前のニュースで検討したものと全て同じです。初期の円周方向の応力 20×10^6 と長手方向の応力 10×10^6 が、厚さの異なる4つ全ての円筒シェル構造物に割り当てられています。これらの初期応力は内圧 p=20×10^6×t/R が掛かった圧力容器の応力状態に良く似ています。

表1に、初期応力を持った各シェル構造物の 20番目までの周波数と長手方向の半波(N)と円周方向の全波(M)がリストされています。比較のため、対応する初期応力の無い状態のシェル構造物の結果(以前のニュースのレポート)が表2に記載されています。T = 0.00001 の初期応力あり・初期応力なしの場合の1次固有値のモードシェイプが、上のアニメーションで表示されています。この結果から興味深いことが観察できます。



表1. 初期応力のあるシェル構造物の周波数とモードシェイプ


表2. 初期応力のないシェル構造物の周波数とモードシェイプ

  • t = 0.01 では、周波数が僅かに増加しますが、モードシェイプには変化がありません。(N と M が変化していません。)

  • t = 0.001 では、周波数がもう少し大きく増加し、モードシェイプについては部分的に変化が現れています。(15番目・16番目の周波数では、M = 4, N = 2 になっています。これは、初期応力無しの場合の17番目・18番目のモードシェイプです。)

  • t = 0.0001 では、ここに記載している全ての周波数について顕著な増加がみられ、モードシェイプについても顕著に変化があります。4番目までの周波数では、同じ板厚の初期応力の無いシェル構造物と比較して円周方向の波の数が少なくなっています。

  • t = 0.00001 では、周波数とモードシェイプについて、t = 0.0001 の結果に良く似ています。同じ板厚の初期応力の無いシェル構造物と比べて顕著に剛性が上がっています。

  • 板厚が小さくなったときのシェル構造物の挙動の漸近傾向は、初期応力が無い場合とある場合で異なります。初期応力の無いシェル構造物では、1次固有値は、大体 √t に比例しています。一方、初期応力のあるシェル構造物では、板厚に関して不変の1次固有値に収束しています。言い換えると、周波数が 500Hz を超えた値で安定しています。

同じ2つのケースの軸方向のモーダル応力が、下の図 (a) と (b) に示されます。各図の左半分は外側の面の応力、右半分は内側の面の応力を示します。(比較し易いように並べて示しています。)

初期応力のあるシリンダーでは、両サイドでほとんど差が無く、膜変形のモードが支配的であることを暗示しています。初期応力の無い場合では、軸方向のモーダル応力の差が明らかで、シリンダーの中央付近で曲げ変形と膜変形の両方があります。しかし、固定端付近では、内側と外側の面の応力にほとんど差が無く、この領域では主に膜変形が起こっていることを暗示しています。






  t = 0.00001 のシリンダーの最小固有値の 軸方向モーダル応力
(a) 初期応力あり (b) 初期応力無し

この例題では、シェル構造物の複雑な挙動について更にお伝えしました。特に、初期応力は、構造の応答に顕著な影響を与え、正確な結果を得るには考慮しなければならないことです。ADINA は、このような解析の複雑さを取り扱うのに非常に有効です。


キーワード :
Shells, frequency analysis with pre-stress effect, mode shapes, initial stress, membrane-bending coupling


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