ケーブルと膜構造の解析
2014.6.30 Analysis of Cable-Membrane Structures
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ケーブルと膜構造は、見た目も美しく大きな空間を張る軽量構造を作り上げることができます。 このような構造は、屋根やモダンな円蓋構造、そして空間で展開できる大型反射鏡アンテナに広く利用されています。
ケーブルと膜構造の各部位では構造が圧縮や曲応力に抵抗できないように引張 を維持しなければなりません。このような構造の解析には大きな非線形性(幾何学的 な ものと材料的なもの)があるために高度は技術が必要になります。材料の応答は、クリンプ交換(しわのよれ)、糸の張り、崩壊、繊維のしわなどの変形機構があるに違いありません。
張力ケーブル-膜構造の設計では、エンジニアは、次のことを考慮しなければなりません。
1.形状を保つ荷重:これらは、膜の初期張力によって繊維が引き裂かれず、 しわもない所望する形状に必要なケーブル荷重です。
2.構造の動的特性:ケーブルと膜構造は、地震下で大きく振動します。構造は、このような動的荷重下でも崩壊してはなりません。
3.風荷重に対する構造の応答:主に重要となるのが風荷重です。強い突風は 大きな応力がかかり、ケーブルの断裂や膜のやぶれの原因となります。
本文では、中国のランドマークケーブル-膜構造の設計を行うためのADINAの利用を紹介します。単純な形状を用いて解析の手順を図示していきますが、もちろん、これらの手順はどのような形状に対しても応用できるものです。
まず最初の解析ステップは形状を決定することです。図2(a)は形状を求める前の鞍型のケーブル-膜構造です。そして、図2(b)は形状が求まった後の構造です。
膜は、しわを考慮できる繊維材料モデルを用いたADINAの3D平面応力要素(通 称、膜要素)を用いてモデル化します。異方性の繊維ガラス材料特性を用います。形状を求める段階では、ADINAのアライメント要素を下の動画に示すような位 置に膜を引くのに用います。アライメント要素はこのような解析に極めて便利です。


求形後、ケーブル-膜構造の動的特性をモーダル解析を用いて調べます。モードを用いて地震による地震動下の構造の振動を求めるのに周波数領域でスペクトル応答解析を実行します。
解析の最終段階では、突風下におけるケーブル-膜応答を考慮します。構造は、柔軟性が強いので流体の影響を強く受けて変形します。したがって、強連成の流体構造連成解析を突風の影響を検証するのにADINA FSIを用いて実行します。
ADINA FSIモデルを正当性を確認するために、ADINA FSIの結果を風洞テストの結果と比較します。図3.はFSIの流体メッシュと風洞テスト設備です。下の動画は、計算した速度場です。


レーザーを用いて測定した実際の膜のたわみとADINA FSIの結果を表1.に比 較 します。ADINAの結果は実験にかなり一致しているのがわかります。
表1.2.24kN/mの初期張力で16m/sの風速下における中心位置の膜の変位
実験結果 (mm) | ADINA FSI (mm) | |
平均変位 | 11.0 | 11.2 |
標準偏差 | 0.86 | 0.81 |
安全かつ機能的で美しい最終設計のために実際のケーブル-膜構造の詳細解析を実施しました。
本文は、様々な荷重下における複雑な構造設計のための理想的な解析ツールとしてのADINAに搭載されている幅広い構造解析とFSIの解析機能と信頼性を紹介するものです。
参考文献
Q. Zhang, Y. Yan and H. Li, "Theoretical and experimental studies on wind-induced vibration of tension structures", Journal of Southeast University (Natural Science Edition),Vol. 43, No. 5, Sep. 2013.
キーワード
ケーブル-膜構造、形状決定、アライメント要素、ガスト荷重、風荷重、モーダル解析、応答スペクトル解析、動荷重、流体-構造相互作用、FSI
協賛:Radux Industry Technologies, Inc., 北京, 中国