シェル構造の大ひずみ解析のベンチマーク問題

2012.10.15 Benchmark Problems for Large Strain Analyses of Shell Structures




シェル構造の大ひずみ解析のベンチマーク問題


自動車の衝突、圧壊や金属成形などのようにシェル構造が大きくひずむ問題は たくさんあります。シェル構造の大ひずみの解析法の開発において、ベンチマーク 計算による計算処理の妥当性を確かめることはとても重要です。しかし、 文献にはそのような計算がほとんどありません。

ここに、シェル構造の大ひずみのベンチマーク問題を二つ紹介します。 実際の大ひずみ解析でよく起こりうる状況の中で要素の能力を検証する ためにこのようなベンチマークを考えました。

ベンチマーク問題はADINAの3D-シェル要素を用いて計算するとともに、 27/4節点の3Dソリッド要素との比較も行っています。ADINAの3D-シェル要素 は、まさに、シェルの大ひずみ解析のために用意したものです。そして、 この要素は、 2010年4月の技術報告で既に紹介したものです

この要素は、アワーグラスを制御せずに、人工的な数値粘性によって計算の 破綻を押さえ込む擬似的なゼロエネルギーモードを用いない定式化を 採用しているというこが重要な点です。静的計算や陰的、陽的な動的計算に 直接用いることができます。

シェル構造の大ひずみ解析のベンチマーク問題

薄いシェルを潰すほどの代表的な曲げ成形を考えます。この問題では、 制御された条件下の一点曲げを扱います。

図1に問題を示します。シェルは、厚み/長さが1/500と薄く、完弾塑性材料 モデルを用います。接触面を下方向に移動させながらシェルを押しつぶし、 シェルを固定したところで折り曲げられていきます。

図1.塑性する薄いシェルの平面ひずみ折り曲げ


計算では、4節点3Dシェル要素のメッシュ、さらに27/4節点の3Dソリッド要素 のメッシュも使います。メッシュは要素が端で最小になるように徐変させて 作成します。全ての解析で、3点のガウス積分点を厚み方向に用います。

3Dシェル要素が100要素の場合の折れ曲がりの末端の変形前モデルを図2に 示します。図3と図4は接触面を押し下げたことによる強制変位としての 変形モデルを示します。

 
図2.変形前のメッシュの詳細     図3.中間面の変位
       


図4.累積有効塑性ひずみのコンターを表示しながらの変形したメッシュの詳細


図5は計算された力-たわみ曲線を示しています。一つの図で全体の変形範囲の 計算応答が見れるように両軸に対数スケールを用いています。 計算された応答はどのモデルも極めて近いのですが、50要素の3Dソリッド要素モデル は他のモデルよりも堅いことがわかります。

図5.力-たわみ曲線


49.5mm以上の変位では、力-たわみ曲線が階段状のふるまいになっています。 この現象は接触アルゴリズムに起因するもので、各ステップで節点が接触していく ことで力-たわみ曲線がこわばっています。

これは、薄いシェル構造ですが、自動車産業でよく現れるような塑性歪は 末端で70%にもなります。

ベンチマーク問題2:薄肉円筒シェルの座屈

曲げ成形のもう一つは、座屈による塑性しわが作られる例です。図6?9に 問題を示します。シェル区画は、厚み/長さが1/100と薄く、完弾塑性材料モデル を使います。曲げを受ける円筒シェル区画の中間面の形状は、以下に従う パラメトリック座標:ζ_1、ζ_2で与えられます。

ここで

また、0≦ζ_1≦L , 0≦ζ_2≦πR/2。 RとLはシェル区画の半径と長さ、 Bは、摂動の振幅です。B=0で、上の式はx=0、x=L、y=0、z=0の 境界条件で長さL、半径Rの円筒区画の形状を縮小させます。 下図に上の式を説明します。



 
図6.モデル化したシェル区画     図7.摂動形状
       


x座標におけるシェルの摂動形状を図8に示します。断面(太線)を一つは、半径R-b での円ともう一つは半径bでの円の二つを用いて構成します。断面の傾斜は、 y=0でゼロです。

 
図8.x座標における断面     図9.y=0の断面
       


有限要素計算には、3Dシェル要素メッシュと3Dソリッドメッシュ(27/4ソリッド要素) も比較に使います。全てのモデルで、厚み方向には3点のガウス積分点を使います。

このwebページの上の動画は、50x75の3Dシェル要素メッシュが 圧縮強制変位を受けての変形と累積有効塑性ひずみを示しています。x=0での対称 線近くで曲げとなり、とても大きな歪がその曲げ部に現れています。

図10は、様々なメッシュ粗さの3Dシェルと3Dソリッド要素メッシュを用いて得られた 力-たわみ曲線を示します。計算された力-たわみ曲線の応答はお互いにかなり近 いです。

図10.力-たわみ曲線


明らかに、これらベンチマーク問題は、ADINAの3Dシェル要素の能力が、 非常に大きなひずみを受けるシェル構造の解析に適用できることを示しています。 要素は多くの産業分野への適用に有効かつ信頼して使うことができます。


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シェル要素、3Dシェル要素、大ひずみ、塑性、ベンチマーク計算、座屈