ADINAの電磁場解析

2011.2.17 Electromagnetics with ADINA

Electromagnetics with ADINA
ADINAの電磁場解析

電磁場解析は理工学において、特に、機械システムや流体システムと連成する電磁場の効果のときはとても重要になります。

電磁場は様々なものに適用されています:
電動モーター、電気炉やオーブンの発熱、医療機器、電磁スイッチ、電磁ポンプ、電磁ブレーキ、誘導波、アンテナ、送電線、電磁鋳造、金属の非破壊試験等。

このような電磁場のふるまいと応用に関しては一般化Maxwell方程式によって統一的に表せます。マルチフィジックスへの適用のために、ADINAシステムの新しいモデリング機能として様々な荷重と境界条件をともなう一般化Maxwell方程式を解くための「ADINA-EM」プログラムをしばらくの間、開発してきました。

ADINA-EMの新しい機能では、ユーザーは様々な問題について一般化Maxwell方程式を計算することができるようになります。また、流体場と電磁場を連成させることも可能です。

基本的には、電界の強さ Eと 磁場の強さ Hによって電磁場を表わす1次のMaxwell方程式は、
[文献1参照]

同時に

また、周波数領域におけるMaxwell方程式 (調和周波数解析のための)は、

ここで、

これら方程式では、電磁場材料は、誘電率ε、透磁率μ、導電率σで表されます。
ソース項は、2つの密度J0とK0、そして電荷密度ρ0になります。
適切な境界条件とともに、Maxwell方程式は、問題領域内のEとHが一意的に決まります。

ADINA-EMでは、二つのまったく異なる定式化、それらは、斬新なE-H法とA-φ法が用いられます。
ここで、通常用いるA-φ法では、

両方の手法で、有限要素法を適用します。

有効的で高精度であるには、上述の1次のMaxwell方程式を解く代わりに、これらの方程式を他の方程式を追加させることなく、2次に組み立てなおします。[文献2参照]

ADINA-EMでは、E-H法とA-φ法のまったく異なる2つの手法を提供しているということが重要な点になります。

その理由は、A-φ法は、工学者や科学者が精通しているので、すぐに使うことができますが、よく知られているだけにデメリットなこともあります。

E-H法は、斬新な手法で、未知の物理変数を用い、より直接的に、これらの変数を流体や構造の運動に直接に結合することができるのです。

エッジタイプの要素(要素辺で自由度のある)は利用できない事も注意する必要があります。しかし、より強力な手法を用い、ここで、さらに、用いている通常の流体や固体要素に直接に接続することもできます。

ADINA-EMの最初のリリースでは、次の電磁場問題を解く事ができます:

  • 電場 -磁場 -直流伝導 -時間変動 -渦電流 -交流伝導
  • 電磁界のローレンツ力 -電磁界と連成した温度 -導波管

もちろん、ADINA-EMモデルのプリ-ポスト処理には、AUIを使用して行います。
以下は、ADINA-EMを使用した3つの例題の解析をお見せします。

Sharp material interface in harmonic analysis
調和周波数解析における極端に異なる材料の接合

最初の例題は、良い検証問題で、違いすぎる特性をもつ材料の界面を横切る電界と磁界の計算においてADINA-EMの能力をお見せします。

図1に示すのは、外側の領域が導電率ゼロの材料、内側の領域が高い導電率を持った材料です。
これらの極端に異なる材料によって、電界と磁界が材料の接合面を横切るときに急激に変化します。

それぞれの領域内に異なる手法を使う代わりに、両方の領域にE-H法によるADINA-EMを用いて解析します。

図2と3の表示は、電界と磁界の強さの実部と虚部を示しています。

図1、特性の極端に異なる材料界面問題:概略図
図2、特性の極端に異なる材料界面問題:Eのベクトル図;実部(左図)と虚部(右図)
図3、特性の極端に異なる材料界面問題:Hのバンド図;実部(左図)と虚部(右図)
図4、特性の極端に異なる材料界面問題:E、ADNAの結果と解析解の比較;実部(左図)と虚部(右図)
図5、特性の極端に異なる材料界面問題:H、ADNAの結果と解析解の比較;実部(左図)と虚部(右図)

Electromagnetically induced mixing of glass melt in a pipe
パイプ内のガラス溶解中の電磁誘導

これは、電磁解が誘導されるマルチフィジクスと混合の問題になります。 電磁駆動のパイプミキサー内の移流混合を計算するために、ADINA-EMのA-φ法とADINA CFDの手法を用い、連成させています。

この問題の概略を下の図6に示します。

この例題は、一方で外部に一定の磁界をかけて全体を構成している中で導電する流体に浸されている2本の電線間が時間で変化する電圧によって現れるローレンツ力で攪拌される円筒管内に流体が流れます。

面内のローレンツ力による流れ方向に対する垂直な面で攪拌がおきます。

図6、電磁誘導による混合:概略図

このページの最初にある動画は、流入口の不均一な分散から混合する過渡現象を示しています。

以下図7から9は、電磁ミキシングの定常解を示しており、計算したポテンシャルAとφ、主流方向に垂直な断面内の流速、流入出口の質量集中を表しています。
流出口の均一な質量集中が完全に混合されたことを示しています。

図7、電磁誘導による混合:ポテンシャルA(左)φ(右)結果
図8、電磁誘導(カオス的)による混合:流入口付近の流速ベクトルプロット
図9、電磁誘導による混合:流入口の質量比(左)と流出口の質量比(右)

Eddy current in a torus with cracks, induced by time-harmonic magnetic field
割れ目のある環状導体の時間変化する磁界によって誘導される渦電流

この問題の概略図を以下の図10に示します。 渦電流は、正弦的に変化する磁束が外部からかけられることで導体内で誘導されます。環状の導体には4つの深い溝があります。

これらの溝は、溝のないときの通常の状態の電界と磁界を変化させます。この現象は、電磁界を利用しての非破壊検査(NDT)の基礎になっています。

全体モデルの1/8でモデル化しています。これは、時間変化する3次元の渦電流問題をADINA-EMのE-H法を使って解析したものです。以下の図11と12では、電界と磁界の強さの実部と虚部のバンド図を示しています。

割れ目が両方の場の方向と大きさを変化させているのがわかります。

図10、環状内の渦電流:概略図
図11、環状内の渦電流:Eのベクトル図;実部(左)と虚部(右)
図12、環状内の渦電流:Hのバンド図;実部(左)と虚部(右)

ADINA-EMの将来的な概要で追加機能を公開していきます。
ADINA-EMの追加により、ADINAが提供するマルチフィジックスの機能が強化された事は明らかです。

既存のマルチフィジックスの機能についての適用事例は、こちらを参照下さい。

参照

  1. C. A. Balanis, Advanced Engineering Electromagnetics, John Wiley & Sons, New York, 1989.
  2. K. J. Bathe et al., The Direct Solution of Maxwell’s Equations in Multiphysics, in preparation.

キーワード

電磁場、Maxwell方程式、マルチフィジックス、流体流れ、電界、静電界、磁界、静磁界、渦電流、導波管、非破壊試験、NDT、ローレンツ力、混合