サブスペース反復法の利用について

2011.9.30 On the Use of the Subspace Iteration Method


サブスペース反復法の利用について

大規模構造システムの固有値とモード形状の計算は、現在一般的に実施されておりサブスペース反復法はそのような計算に広く利用される手法です

数十年前にこの手法は文献[1] で提案されました。 大きな問題とは、下位20個の周波数とモード形状を計算する必要のある1万自由度の構造モデルでした。 それ以来、信頼性と有効性の理由からサブスペース反復法が数百万自由度の有限要素モデルで数百の固有値とモード形状や構造に幅広く使用されています。 また、全く新しい分野にも利用されています。

サブスペース反復法の基本式は、文献[2]を参照してください。


文献[1],[2]で議論しているように、この手法はサブスペース上で逆反復法を組み合わせています。 それゆえ、各サブスペースから最良の固有値と固有ベクトルを抽出するレイリーリッツの解析を ともなうサブスペース反復法の名になっています。 反復開始ベクトルの適切なセットと"素性のよさ"を作ることがミソです。 計算進行はシフト操作を使って加速させることもできます

収束の速い適切な反復開始ベクトルの重要性が研究されており、 例えば、文献[3]では、たんぱく質の固有値やモード形状の計算にこの手法が使用されています。 図1は、標準的なたんぱく質を示しています。反復ベクトルの最適な数の使用が必要な反復回数を大幅に減らし、 計算時間は探索する固有値ペア数に比例して増加します。 たんぱく質の分析におけるもう一つの重要な適用は、立体配座の経路変化における固有値とモード形状の計算です。 ここで、固有値計算は近隣の多数の立体配座で探索し、 図2に示すようにサブスペース反復法がこの計算作業に特に向いています。 このような利用のより詳細は文献[3]に記載されています。


図1 標準的なたんぱく質





図2 サブスペース反復法を使用した立体配座ごとの計算時間。文献[3] 参照



ここではもう一つの重要な項目に焦点をあてます。 それは、サブスペース反復法の並列処理についてです。 上で与えられた基本式を考えたとき、それはこの方法が、最初にKマトリクスのLDL^T 分解を行い、 その後にたくさんの反復による前進消去と後退代入をともなうことがわかります。 係数マトリクスの分解はSMPとDMPである程度まで行うことができます。つまり、共有と並列分散処理によって、 各ベクトルが他のベクトルと独立しているために、特に反復ベクトルの前進消去と後退代入を並列処理に導きます。 したがって、ベクトルのブロックを異なるマシンノードに割り当てることができ、同時に処理することができます。

ADINAはサブスペース反復法にSMPとDMPを提供します。また、 この方法は、大変形と接触を含む非線形と線形の解析に使用することができます

図3は、プラズマ核融合装置のコイルと支持構造の有限要素モデルです。 私たちはこれまでの研究(earlier studies)の中からこのモデルを用い、そして、このモデルには多くの接触面があります。 上記の動画は、振動の6番目のモード形状を示しています。 固有値はインフィニバンドで接続された各々2.66GHzデュアルクアッドコアプロセッサの4ノードからなる HPクラスターで計算されました。図4に示される計算時間を得ました。




図3 プラズマ核融合装置のコイルと支持構造の有限要素モデル;約600万自由度と120,000の接触セグメント



図4 プラズマ核融合装置の固有値とモード形状の計算時間


図5もこれまでの研究(earlier studies)で考慮したことのあるボルト締結された車輪構造のモデルです。 固有値とモード形状が同じマシンを用い、図6に示された計算時間で計算されました。 このケースでは、探索する固有値ペアの数につれてほとんど線形的にに計算時間が増加しているところに興味深さがあります。 図4の計算時間はより大きいな固有値に対してそれほどでもない増加にとどまっていることを示しています。 いずれの場合も計算時間を最適することなく、シフト操作のような加速手法も適用しませんでした。




図5 ボルトで締められた車輪のアッセンブリの有限要素モデル;約250万自由度と5,000の接触セグメント





図6 ボルトで締められた車輪のアッセンブリの固有値とモード形状の計算時間


これらは、固有値とモード形状の計算のためのサブスペース反復法の適用に関する知見です。 並列化は、線形・非線形の解析だけでなくたんぱく質の正規モード解析計算のような他分野にも大きな興味があるのが明らかです。



References

1. K.J. Bathe, "Solution Methods for Large Generalized Eigenvalue Problems in Structural Engineering", Report UCSESM 71-20, Department of Civil Engineering, University of California, Berkeley, November 1971.

2. K.J. Bathe, Finite Element Procedures, Prentice Hall, 1996.

3. R.S. Sedeh, M. Bathe, and K.J. Bathe, "The Subspace Iteration Method in Protein Normal Mode Analysis", J. Computational Chemistry, 31:66-74, 2009.



Keywords:
Subspace iteration method, structures, frequency, mode shape, parallel-processing, shared memory, distributed memory, proteins