電子ビーム溶接のTMC解析
2011.3.30 Thermo-mechanical Analysis of Electron Beam Welding

Thermo-mechanical Analysis of Electron Beam Welding
電子ビーム溶接のTMC解析
電子ビーム溶接は、高速電子ビームの運動エネルギーを利用した、融接(ゆうせつ)工程です。運動エネルギーが熱エネルギーに変換される事により、ワークピース(加工対象物)
に熱の影響が生じます。
このショーケースでは、内径の異なる2本の鋼管の電子ビーム溶接工程を解析した結果を紹介します。
解析結果はまた、実験結果と比較しています。(参考文献参照)図1は、サンプルと溶接領域の拡大図です。 
図1、溶接されたサンプル 図2は、溶接工程のモデルを、有限要素モデルを断面図として表したものです。(解析はフルモデルです。)
熱源の動きは、各溶接域の円周に沿って、1つの角柱(prism)要素に熱源を適用する事により、表現されます。
円周に沿った72個の角柱(prism)があり、熱源の回転として5度分に相当します。熱流束は、パルス状に適用され、各パルス毎にIdle Time(空き時間)があり、実験条件としてモデルに適用されます。
電子ビーム溶接は、真空中で利用されているため、鋼管壁上での熱伝達係数はゼロです。
溶接パルスは、100タイムステップ毎に離散化されます。温度依存の熱特性は、鋼管の熱挙動のモデル化に使用されます。
温度依存の弾塑性材料モデルで、降伏応力と歪硬化モジュールが熱応力解析に使用さ
れ、温度ごとに機能します。
トップページの動画は、鋼管の円周に沿った熱源の移動による、溶接パスに沿った温度
域の発生をしめしています。

図2、解析モデルのメッシュ(断面図) 図3は、横軸時間とした温度変化をしめしています。10 mm/sの溶接速度、鋼管軸に垂直な同じ面上のポイント位置、板厚方向の異なる深さ毎に表示。
図4は、横軸時間とした温度変化をしめしています。10 mm/sの溶接速度、板厚方向に同じ深さのポイント位置、鋼管軸方向の異なる位置毎に表示。
図5は、1ポイントでの横軸時間とした温度変化をしめしています。異なる溶接速度毎に表示。

図3、溶接域での時間毎の温度変化。(溶接速度10mm/s)
図4、溶接域での時間毎の温度変化。(溶接速度10mm/s)

図5、1ポイントでの時間毎の温度変化。(異なる溶接速度毎) 図6は、異なる時間でのパルス間隔毎のTMC解析の温度変化と鋼管内の熱応力を重ねたスナップショットを示します。溶融池周りで発生した相当応力の最高値や、溶融池で発生した相当応力の最小値がはっきり見えます。 図7は、実験結果と解析解との比較を示します。等温線は、FEMを使って得られた結果で、溶接領域の写真と重ねています。溶接領域の下層部は妥当な結果です。しかしながら、上部の結果は矛盾しています。矛盾の主な原因は、2次的な熱処理を受けた事で、溶接面が伸びましたが、この2次的な熱処理は、数値解析ではモデル化されていません。 
図6、温度域と相当応力のバンド図(a)半分のパルス波、(b)最終のパルス波(c)パスル波間の休止期間。 
図7、有限要素解析を使った温度場と実験データの比較。
この研究は、温度場と機械的変形の強力なカップリングした興味深い、産業界の問題を解析するためのADINAの機能のいくつかを紹介しています。 詳細は、ADINA機能紹介の「thermo-mechanical coupling」のページを参照下さい。
参考文献P. Lacki, K. Adamus, "Numerical simulation of the electron beam welding process", Computers and Structures, 2011, in press. キーワード:電子ビーム溶接、TMC(thermo-mechanical coupling)、残留応力、温度依存性弾塑性材料、移動熱源 提供:P. Lacki and K. Adamus (Czestochowa University of Technology, Poland)
