咳(せき)のメカニズムのFSI解析

2010.5.15 FSI Analysis of the Human Coughing Mechanism

FSI Analysis of the Human Coughing Mechanism
咳(せき)のメカニズムのFSI解析

 

医療工学において、人間の様々な生理現象のメカニズムを解析し、外科手術やその他の療法の改善やより良い理解をするために、ADINAは幅広く使われています。

 

今回は、人の気管で咳をするメカニズムに注目してみます。

ADINA FSIを解析に用い、人の気管壁の変形としぼみ具合を、通常の呼吸の場合と咳の場合で比較します。

 

これは、気管内チューブ(参考文献参照)の内挿患者が、咳の効果を改善するために、更なる手術が必要であるかを検証するために行われます。

 

咳のプロセスのよりよい理解は、外科医が最大限に効果を発揮するチューブの内挿位置を決めるのに、役立ちます。

ADINA-FSIが通常の呼吸と咳の状態を、解析します。

数値結果は、気管断面の実際の変形形状と比較することができます。

 

このモデルには、気管壁の組織をHolzapfel材料(異方性超弾性材料)を用いて、等方性/異方性の超弾性材料をモデル化しています。

気管内の空気の流れは、通常の呼吸と咳の状態を、それぞれ層流と乱流によるニュートン流体でモデル化しています。

空気の流れと気管壁の相互作用はALE(Arbitrary Lagrangian-Eulerian)定式化を用いてモデル化します。

 

図1は、通常の呼吸時の気管壁と気管チューブ断面の変形を示しています。

グラフは、呼吸時の流量変化を示し、軟骨組織(機関壁の部分として)の変形のアニメーションも示しています。図の右端に解析結果とそれに対応する気管断面の変形の写真を示します。ADINAによる断面変形の予測形状は実際の形状とよく一致しています。

 

図1 通常の呼吸時

 

咳の時は図2で示しています。

グラフは、気管内チューブ内の流量を示していますが、咳は通常の呼吸よりもかなり速い現象で、通常の呼吸(図1)の4秒に対して1.3秒内とより短くなります。

気管壁のアニメーションは通常の呼吸より、かなり大きな変形が見られます。

この様子は、図の右端の解析結果とそれに対応する気管断面の変形の写真から、明らかに確認できます。

 

 

図2. 咳の時

 

通常の呼吸と咳の両方で、ADINA FSIを気管壁の変形を精度よくシミュレートするのに用いました。

結果から、気管壁の剛性の増加と、気管内チューブの筋収縮能力に伴う損失による、患者がする咳の難しさが洞察できました。

 

この検証は、医療研究におけるADINA FSI利用の有効性を示しています。

医療研究におけるADINA FSIの適用に特化した出版リストや、それ以外の領域での出版リストは、ADINA FSI publicationsから見つかるかもしれません。

 

[参照文献]

 

* M. Malvé, A. Pérez Del Palomar, J.L. López-Villalobos, A. Ginel, and M. Doblaré, "FSI Analysis of the Coughing Mechanism in a Human Trachea", Annals of Biomedical Engineering, Vol. 38, No. 4, pp. 1556-1565, 2010

 

キーワード:

気管、生体医療工学、気管内挿、流体-構造相互作用、FSI、咳、繊維補強材料、

大変形、Holzapfel、ALE、乱流

 

協賛

Courtesy of M. Malvé, A. Perez Del Palomar, M. Doblaré (Universidad de Zaragoza, Spain; CIBER-BBN,

Spain and Instituto de Salud Carlos III, Spain); J.L. López-Villalobos, A. Ginel (Hospital Virgen

del Rocío, Seville, Spain)