生物学的なプロセスには、流体‐構造相互作用
(FSI)が多く含まれます。今回紹介するのは、心臓モデルの解析です。患者固有の右心房/左心房とパッチが組み合わさったモデルで、流体と構造が連成し
ています。こ
の解析は、心臓の肺動脈弁の置換、差込のための外科手術とパッチデザインの検証と最適化を目的としています*。
ボストンの小児病院とハーバードメディカルスクー
ルで、心臓疾患磁気共鳴(CMR)イメージングが研究されました。この研究では、まず健康なボランティアと、右心房の肺動脈弁の置換を必要とする患者の
心房の形状、流速、流量のデータを得ました。これらの情報から、メカニカル解析を行い、右心房の心臓機能を評価するためのFSIモデルを構築します。
Figure
1は、MRIコンターと、パッチ、傷跡、弁の位置が示された右心房、左心房の内側/外側のサーフェスのプロット、また使用した有限要素メッシュを表示して
います。

Fig.1 再構築された心房の3D形状:コンター、形状、弁とパッチの位置、メッシュ
この研究では、CMRデータを用いて、計測に対し
て、解析モデルの
右心房の体積の予測が一致しているか(3%以下の相違)を調整、査定しました。
Figure2と3はFSI解析の結果を表しています。上のムービーは、患者特有の右心房/左心房/パッチのFSIモデルから計算された最大主ひずみの変
化です。
モデル結果は以下のことを示しています。
- 患者特有のCMRベースの解析モデルによって、右心房の心機能に関する有益な
評価が得られます。
- より小さなパッチと、傷跡をより大きく除去することによる肺動脈弁の置換は、
パッチエリ
ア
の
応力とひずみを減らし、右心房の機能を回復させます。
- 流体のせん断応力と心房の応力/ひずみ分布に関する詳細な知見によって、外科
手術とパッチの最適化に関する有益な情報を得ることができるでしょう。
この解析では、生物学の研究分野において、
価値のあるADINA FSIの使用が示されています。詳細については、下のリファレンスをご覧ください。

Fig.2 異なる段階における速度プロット。右心房の流れパターンを表しています。

Fig.3 主応力と主ひずみのプロット
Reference
C. Yang, D. Tang, I.
Haber, T. Geva, P. J. del Nido, “In Vivo MRI-Based
3D FSI RV/LV Models for Human Right Ventricle and Patch Design for
Potential Computer-Aided Surgery Optimization”, Computers &
Structures, 85, 988-997, 2007.
*Worcester
Polytechnic Institute、 D. Tang 教授のご好意による
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