アコースティック流体は、
圧力容器やタンクなどの内部の水のモデル化などによく使用されます。
この要素では、水の質量や波動伝播をモデル化できます。
アコースティック流体要素は線形なので、計算の効率はとてもよいです。
アコースティック流体に
含まれない効果に、ベルヌーイ効果(ベルヌーイ式の½ρv2 項)があります。
この効果が重要な領域には、アコースティック流体要素を使用しないほうがいいでしょう。
ADINAの
サブソニックポテンシャルベース流体要素は、ベルヌーイ効果を考慮する必要があるときに使います。
この要素は、ベルヌーイ効果を考慮できることを除いて、アコースティック流体とよく似ています。
ベルヌーイ効果は非線形なので、サブソニックポテンシャル流体要素は非線形です。
タンクからの排水
ベルヌーイ効果が
重要となる簡単な問題の例として、タンクからの排水について考えます。
下の図1をご覧下さい。

図1. タンクからの排水; (a)簡略図 (b)メッシュ
このような
問題はサブソニックポテンシャルベースの要素を使用すると簡単に解くことができます。
タンクの上部に、自由表面のポテンシャル境界を定義し、
バルブに流入口-排出口ポテンシャル境界を定義します。
また、流出口圧力をバルブに与えています。
最初の解析では、
流出口の圧力に静水圧を設定し、重力荷重を与えます。1ステップの静荷重です。
流体の圧力は予測どおり静水圧です。
2回目の解析(リスタート解析)では、流出口の圧力を突然0まで下げ、動的な解析を行います。
図2に結果を示しています。
図2. タンクからの水の放出; 結果
HDRブローダウン実験
ベルヌーイ効果を
考慮するべき実例として、HDRブローダウン実験 V31.1.について考えます。
軽水炉の解析で重要な問題は、加圧水型原子炉の冷却液の損失によるコアバーレルと圧力容器の応答です。
ドイツのHDR( Heissdampfreaktor )安全プロジェクトでは、このようなタイプの解析に用いられる
コンピュータープログラムの実験検証を与えるために開発されました。
下の図3は、
HDRブローダウン実験のシミュレーションのために使われたFSIモデルの大まかな構造を示しています。
図3. HDRブローダウン実験; FSIモデル
流体は
サブソニックポテンシャルベース要素で、構造部はシェルとソリッド要素でモデル化されています。
1回目の解析では、1ステップの静荷重として、流体の内部圧力がかけられています。
2回目の解析(リスタート解析)では、パイプの流出口の圧力を下げ、パイプ破損のシミュレーションを
動的解析で行います。
ページトップのアニメーションは、解析の結果を示
しています。
左側は流体の圧力を示し、右側は構造の変形を誇張表示しています。
実験データと比較すると、とてもよく一致しているのがわかります。リファレンスをご覧ください。
ADINAの
サブソニックポテンシャルベース流体要素が、このような解析にとても有用であることは明らかです。
キー
ワード :
流体構造連成、原子力パワープラント、ブローダウン実験、パイプ破損解析
HDR容器、 サブソニックポテンシャルベース流体要素、ベルヌーイ効果、アコースティック流体
Reference
- T. Sussman, J. Sundqvist,
"Fluid-structure interaction analysis with a
subsonic potential-based fluid formulation", Computers and
Structures, 81 (2003), 949-962.
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