エアーガイドを付けウッドタイプのゴルフクラブのFSI解析

2014.5.15 FSI Analysis of Wood Type Golf Clubs with Air Guides

エアーガイドを付けウッドタイプのゴルフクラブのFSI解析

通称”ウッドクラブ”あるいは、もっと短く”ウッド”と呼んでいるゴルフクラブは、大きな丸っこいヘッドがついた細長いゴルフクラブのことです。(図1,2を参照。ウッドクラブのヘッドは必ずしも木でできているわけではありません。)普通、遠くに飛ばすために使います。

図1.ウッドクラブ(左);ウッドクラブで打つところ(右)

ゴルファーがフルスイングするとき、ウッドクラブのヘッドは時速100マイル (160km/h)にも達します。このようなスピードでは、クラブに働く空力はクラブヘッドの位置に大きく影響します。図2のように、ヘッドがゴルフボールに当たるとき、ロフト角をもった 打面に働く空気圧力がヘッドを押し下げる方向への力となります。この力は、クラブヘッドの速度に 依存します。より速いクラブヘッドの動きは、より大きな力が作用します。この力は、ウッドクラブを使いにくくすることになります。

図2.クラブヘッドのロフトアングル

革新的なウッドクラブの設計では、ゴルファーがよりコントロールしやすいよう にエアーガイドをクラブヘッドに取りつけます。エアーガイドは空力によって下方へのしなりを減少させます。(図3.参照。)本文では、エアーガイドの効果をADINAを用いてどのように検証するかを紹介します。

図3.通常のウッドクラブとヘッドにエアーガイドを付けたもの(US特許番 号:7390266)

図4は3D ADINA FSIモデルの流体メッシュの部分です。モデルを簡単にするために、グリップエンドはゴルファーの手首の剛性を模擬するのにバネを付けます。(腕は、剛体としてモデルには含めていません。)バネの剛性は実測データから与えます。定常のFSI解析から、左から右へのグラブスイングの動きを反対方向、つまり、右から左への空 気の流れとして表します。計算の開始では、ゴルファーが望んでいるクラブ位置にあります。解析が進んで いくと、空気が左下方向にヘッドを押します。

図4.エアーガイドを付けたウッドクラブのFSI解析に用いる詳細流体メッシュ (クラブヘッドの断面で)

図5と6はシュミレーション結果です。表1には、スイングスピードの違いにおけるエアーガイドがある場合とない場合のわたみを示しています。

上の動画は、所望される位置からの空力によるヘッドの相対的な移動をお見せしています。速度ベクトル場時速100マイルに達したときのヘッドの相対速度に相当するものです。エアーガイドが下方へ移動することを妨げており、ヘッドは左方向へ移動するだけだと分かります。

図5.時速100マイルのスイングにおけるエアーガイド無しのヘッド周りの速度ベクトルプロット(単位は、mm、secを用いています。)
図6.時速100マイルのスイングにおけるエアーガイド有りのヘッド周りの速度ベクトルプロット(単位は、mm、secを用いています。)

表1.各スイング速度におけるウッドクラブのたわみ(負の値は下方向へのたわ みを意味します。)

スイング速度
(mph)
たわみ (mm)
- エアーガイド無し
たわみ (mm)
- エアーガイド有り
70 -7.307 2.578
80 -9.557 3.152
90 -12.10 3.727
100 -14.96 4.335

上記の結果から、エアーガイドが明らかにたわみを減らしているのが分かります。ADINAを用いることでエアーガイドの詳細な性能が得られました。このような知見は今後の設計改善にとても役立ちます。

ADINAの強力なFSI解析機能の情報は、fluid-structure interaction capabilities of ADINAのページを参照ください。

参考文献

・Y. D. Kwon, S. B. Kwon, J. H. Doh and H. K. Kim, “Fluid-structure-interaction analysis of golf clubs comprising air guides”, International Journal of Modern Physics B, Vol. 25, No. 31, pp. 4289-4293 (2011).

キーワード

ゴルフ、ウッドクラブ、エアーガイド、FSI、流体構造相互作用、空力弾性解 析、ヘッドのたわみ