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The “Myth of No-Locking” in Nonlinear Analysis of Shells
シェルの非線形解析における"非ロッキングの通説"

変位法 ベースの要素のロッキング問題については、多くの研究で焦点が当てられてきました。 ソリッドの非圧縮性の解析に変位法ベースの要素は使用するべきでないということは広く認識されています。 線形、非線形の非圧縮媒体(特にゴム状材料や大ひずみの非弾性材料)では、変位と圧力混合補間要素 (u/p要素)の方が効果的です。 リファレンス[1]をご参照下さい、これらの要素は広く使われています。

リファレンス [1-3]には、ロッキングの正確な定義が記述されています。また、リファレンス[1]P281には、事例が紹介されています。 実用的な観点からは、ロッキングした要素やメッシュが使われるとき、計算の解は正確さが失われます。 要素の見かけの応力が蓄積し、予測される変形量よりかなり小さくなります、つまり、"ロック"しているのです。

シェルの 解析において、シェアロッキングとメンブレンロッキングの問題はよく知られています。 多くの研究で、強力なシェル要素の開発がテーマになっています。リファレンス[1,2]をご参照下さい。 変位法ベース要素のロッキングでも同じように、ロッキングは高次要素(3次以上)を使用することで軽減されます。 しかし、これらの要素は計算コストが高く、また接触や非線形材料が含まれる非線形性の強い解析には効果的ではありません。 現状では、低次の4節点四角形シェル要素が使用されることが圧倒的に多いです。 ごくたまに8-9節点の四角形、あるいは6節点の三角形要素が使用されていて、これらは(混合法において)効果的に使用できます。 (このため、数年のうちにこちらにシフトするかもしれません)

シェルの 線形解析においてロッキングが広く認識されていますが、非線形のシェル構造にはこの問題が起こらないという 誤解や通説があるようです。 これには何の根拠もありません。 線形解析においてロッキングした要素は、当然非線形解析でもロッキングしますし、その重要性は同じです。 以下で、2つの問題の計算でこの確認をしたいと思います。

1つ目の問題は、非線形の大変形を考慮した、湾曲ビーム構造の 問題です。 アーチはTimoshenkoビーム要素でモデル化されています。純粋な変位法ベースではロッキングが起こりますが、 混合法では起こりません。 リファレンス[1,2]には、数理解析と数値計算の解が載っています。 しかし通常、ロッキングの数値計算の解は、線形解析で与えられます。 (リファレンス[1-3]) おそらくこれが誤解の原因なのでしょう。

図1.に解析を行った問題の概要と、非ロッキング計算での変形 形状を示します。 図2.には、異なる板厚のビームのエネルギーノルムの相対誤差が示されています。 これらの結果は、4,8,16,32Timoshenko理論ベースのビーム要素の4つのメッシュから得られました。 予想通り、変位法ベースの要素は非線形解析でロッキングしているのがわかります。 例えば、t/L=0.01のケースでは、32 2節点要素でも、エネルギーと先端の変位は、ロッキングしていない正確な値の28%です。




図1. 湾曲ビーム構造解析






図2. エネルギーノルム (構造は2節点のTimoshenkoビーム要素でモデル化されています)



2つ目の 問題では、モーメント荷重を受ける片持ちのプレートをモデル化しています。図3.に示すようにA,B2つの三角形要素のメッシュと Cの四角形要素の一様なメッシュを使用しています。メッシュAとBにはMITC6三角形シェル要素、メッシュCには9節点変位法ベースのシェル要素を使用 しています。変位法ベースの要素は一般的には推奨されませんが、今回は説明のために使用しています。

図4では、それぞれの要素と要素タイプから得られた結果を示しま す。 MITC6要素ではよい結果が得られています。メッシュがゆがんでいる場合でも妥当な結果が出ています。 変位法ベースのシェル要素を使用した解析では、最初のステップ(ほぼ線形の結果が得られています)では良好な結果ですが、 荷重が増加すると、ロッキングによって、正確ではなくなります。 ロッキングが起きているとき、メッシュのカーブは正確ですが、かなりのモーメントを必要としているのが 興味深いです。

この例がしめすのは、 線形解析で要素が正確に動作しているように見えても、非線形解析ではロッキングしてしまうと言うことです。 実際、9節点の変位法ベースの要素では線形解析でも、ロッキングの定義によれば(リファレンス[1-3])、ロックしてしまいます。




図3. 図3. 片持ち平板問題の概要とメッシュA、B、C






図4. 9節点変位法ベースシェル要素、MITC6シェル要素の計算結果



上の計算によって、シェル構造の非線形解析では、ロッキングが 起こらないという誤った認識をあらためることができます。 リファレンス[1-3]とその中のリファレンスにもあるように、数理解析は線形解析に関連しますが、非線形でも同じように重要なのです。 よって、常に一般的で信頼性の高い、効果的なシェル要素を使用することが重要です。 ADINAのシェル要素は高い技術水準であると考えられています。

キー ワード :
シェル、メンブレンロッキング、シェアロッキング、MITCシェル定式化

References

  1. K.J. Bathe, Finite Element Procedures, Prentice Hall, 1996.
  2. D. Chapelle and K.J. Bathe, The Finite Element Analysis of Shells ― Fundamentals, Springer, 2003.
  3. K.J. Bathe, “The Inf-Sup Condition and its Evaluation for Mixed Finite Element Methods”, Computers & Structures, 79, 243-252, 971, 2001.

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