地震でのダムの安全性

2014.10.15 Dam Safety in an Earthquake

地震でのダムの安全性

地震はダムに亀裂や位置ズレを起こしたり、あるいは構成するブロックの分離を起こす可能性があります。 そのダメージは、制御できない水の流出や、大洪水を引き起こす場合があります。有限要素解析などの数値解析は、ダムへの地震被害の可能性を評価するとき、重要な役割を果たします。このページで、ADINAがスイスの技術者のチームにより、この困難な課題に使用された事例を示します。

図1の熟慮されたダムは、スイスのサンクトガレン州のGigerwald湖のダムです。このアーチ型のダムは、コンクリート製で24個の縦方向のコンクリートパネルで構成されています。コンクリートに低い引張強度があるので、ダムは水圧および自己重量が圧縮を引き起こすように設計されています。それによって、コンクリートパネルが分離するのを防ぎます。

スイスの法令では、その位置でダムが、一万年に一度発生する規模のMSK震度階級8の地震において、水漏れを許可してはならないことを定めています。

Dam type: double-curvature arch dam

Number of blocks: 24

Max height: 147m

Crest length: 430m

Dam thickness: 7.0m (crest) to 22m (base)

図1:Gigerwaldダム

図2にダムのADINAモデルを示します。地震動はADINAでは加速度加重で与えます。地震荷重は、ダムの自己重量、およびダムの上流側の貯蔵所水圧と結合します。

図2:ダムの有限要素モデル(左):ダムと岩盤。(右):ダムの11番目の中央のコンクリートパネルの詳細。

エンジニアは、ブロックが規定のマグニチュードで地震中に分離するかどうか判断するため、最初に線形の動的解析をおこないました。この解析では、コンクリートパネルをGlue結合で単一のモデルとして作成されました。結果は、最大の引張応力が分離限度を越えることを示します。したがって、コンクリートパネルは、かなり高い確率で分離します。

図3:線形の動的解析から得られた主引張応力

この分離の安全か脅威かを判断するため、非線形の動的解析を行いました。この解析では、コンクリートパネル間に接触条件を定義しています。結果は、最大の分離および滑り変位が、ダムの頂上の水位で生じています。分離はほぼ数ミリメートル程度です。(図4と5を参照ください。)

図4:地震動におけるブロックの分離(変形量は1000倍に拡大して表示しています。)
図5:頂上水位のコンクリートパネル間の最大開口および滑り変位

ブロックが頂上水位で互いから分離した場合は、コンクリートパネル上部が破砕によりその基礎から完全に分離する可能性はあり得ます。エンジニアはいくつかの事前の水平の割れ目のある3Dモデルを使用して、この可能性を評価しました。結果は、最終の亀裂開口と離れた部分の移動が、安全係数の範囲内であることがわかりました。例えば、想定する割れ目が頂上水位(最も高い垂直の引張応力がこの時点で生じます)で27メートルを下回る場合、亀裂開口は6ミリメートルです。

図6:中央のコンクリートパネルで上部の離れたダムの変形図

これらの広範囲に及ぶ解析結果から、エンジニアは、ダムがスイスの法令に基づいて、地震中に安全であると結論を下しました。

この事例はADINAの強力な機能の一部をデモしており、構造問題を解析する理想的なツールです。特に、必要に応じて、線形解析後に、同じ有限要素離散化を使用して、接触を含む複雑な非線形解析を直接行なうことができます。

参考文献

S. Malla, "Comparison between 2D and 3D analyses of seismic stability of detached blocks in an arch dam", Proceedings of the Second European Conference on Earthquake Engineering and Seismology, Istanbul, Aug. 25-29, 2014.

キーワード

線形動的解析、非線形動的解析、安定性、ダム、地震、コンクリート、亀裂、破壊

協賛:Dr. S. Malla, Axpo Power AG, スイス