帆船航行におけるマストの動的安定解析

2014.5.30 Dynamic Stability Analysis of Sail Ship Masts

信頼性の高いマストは、帆船航行の安全性とパフォーマンスにおいて非常に重要です。マストの倒壊は、船の機動性を失うだけではなく、乗客と乗組員に負傷者をもたらし、船に深刻な損害を与える場合があります。

マストを設計するエンジニアは、異なる荷重ケースのもと、マストの総合的な解析を行なう必要があります。有限要素解析(FEA)は、このような解析に効果的です。実際のところ、ドイツのDNV GLのような、いくつかの船舶協会では、大きな帆船マストの設計ガイドラインに有限要素解析を規定しています。本ページでは、現代における大型帆船の安全で信頼できるマスト設計をADINAを使い、ご紹介します。参考文献もまたご覧ください。

現代の帆船のマストはアルミニウム合金の中空状の柱が一般的です。図1は、ヨット業界で使用される、実際のアルミニウム合金マストの断面をしめします。

図1は、ヨット業界で使用される、実際のアルミニウム合金マストの断面をしめします。

大型帆船のマスト全長は、60~70mで船体の全長とほぼ同じくらいです。しかし、マストパネル(マストの下側の長さ)の支えられていない長さは約10mの位置です。図2はADINAのFEMを示します。マストの下側は完全に固定されています。5トンの圧縮荷重が上側に負荷されます。荷重はマストのチューニングに用いる予荷張力と上部のリングの重さを表しています。

図2 約10mのマストのFEM

まず、マストの座屈後の応答を特定するため、疑似解析として、静的な倒壊解析を行います。計算は、最初に線形化座屈モードを行い、リスタートで静解析を行います。ADINAは線形化座屈モード解析でマストの座屈形状を抽出します。(固有値モード)静解析ステップでは、抽出された座屈形状を初期不整とします。荷重-変位カーブは、座屈後の倒壊の過程をしめします。図3を参照ください。倒壊の進展は、座屈後の結果にみられるように、全体的に座屈しているとわかります。(図4参照)

図3 倒壊解析:圧縮荷重VS長手方向の変位(Z方向)の座屈前と座屈後の倒壊グラフ
図4 軸方向静的圧縮荷重によるマストの倒壊、コンタ図はミーゼス応力を示します。

より複雑で不安定な問題の場合は、動的荷重の傾向にあります。動的荷重は、突然のコース変化や、急加速度/減速度の突風を含む、複数の荷重です。そんな動的荷重は、準静的解析で確立された重量制限をよく超過します。しかし、たいていそのような荷重は瞬間的なものです。

簡単にするため、動的荷重を正弦波の半分定義します。図5参照。ロードファクターは、準静的な安定した重量制限と動的荷重との比率です。異なる波長と振幅はマストの応答解析を確立するために一連の動的解析で使用されます。(図6参照)

図5 動的解析で使われた時間荷重関数
図6 マストの動的応答図

図6にみられるのは、マストの安定性は、荷重の大きさだけでなく荷重の期間も依存します。別の観点では、準静的負荷の下では、マストは全体的に常に不安定になりがちで、(初期固有モードで倒壊。)動的荷重のときは、局所的な不安定となります。トップのアニメーション図は、動的荷重下でのマストの倒壊です。

ADINAの解析能力の範囲が、帆船やボートに関する構造の工学やデザインに、有効であることがわかります。

キーワード

FSI、燃料棒、減衰、振動、原子炉、安全装置