キャビテーション解析

2013.8.30 Simulating Cavitation

キャビテーションは、産業界において、ポンプ、インジェクター、プロペラ周り、水中翼船などで 多く発生します。 この現象は、構造体に著しい損傷と騒音を引き起こすため、注目されています。 キャビテーション(気泡を作る)の流れは、液体と気泡の相変化により、局所的に圧力が液体の気泡圧以下に落ち る場合に発生する特性があります。[1]参照 産業界では、キャビテーションがしばしば急速な相変化にともなう乱流が発生します。 キャビテーション界面上で、流体の密度と粘度は急激な変化が起きます。 この急激な変化は、広範囲の長さと時間規模を持つ乱流流れと一緒に、キャビテーションフローの 解析を非常興味深いものにします。

このショーケースでは、ADINAを使った3例題のキャビテーション流れの解析をご紹介します。 キャビテーションモデルは、Volume-of-Fluid法(VOF法)を使い作られています。

1つ目の例題は、2D軸対称の半球のキャビテーション問題です。図1に概略図を示します。

図1 2D軸対称の半球のキャビテーション問題の概略図

以下表1に、材料特性を示します。

表1 2D軸対称の半球のキャビテーション問題の材料特性

2D軸対称のキャビテーション問題におけるレイノルズ数は以下式になります。

ρは液体の密度、μは液体の動粘度です。Dは半球シリンダーの直径です。 Uは流入口の速度です。 この問題における、密度と粘度の割合は、それぞれ58706と100です。 圧力境界条件は、流出口に指定します。値は、キャビテーション数から得られます。

は液体の気泡圧力です。解析は、3つの異なるキャビテーション数 (σ=0.2、0.3、0.4)で実施します。

図2〜4は、参考[2]のZGBモデルを使い計算された、キャビテーション領域近傍の解析結果です。 σ=0.2のときの、図2がVOF法のコンター図、図3が流速結果、図4が圧力コンター図です。

図2 VOF法コンター図(青色部が気泡を表します。赤色部が液体を表します。)
図3 流速結果
図4 圧力コンター図

計算結果と実験(参考[4]の3次元で行われた実験)の圧力係数分布を異なるキャビテーション数毎に比較したグラフを図5に示します。 計算結果および実験結果で、極めてよく一致しています。

図5 異なるキャビテーション数「(a) σ = 0.2, (b) σ = 0.3 , (c) σ = 0.4」 での1つ目の例題の圧力係数分布。

圧力係数は、で定義されます。 s/Dは、無次元の距離です。sは、軸方角に半球シリンダの中心点からスタートする表面に沿った距離です。 Dは、半球シリンダの直径です。(図1の赤色部分参照)

次の解析事例は、2つの異なるキャビテーションモデルを使った3D上の問題です。 3D形状は、2D形状を軸対称に回転させて作成しています。図6a参照。 材料特性は2Dのときと同じです。境界条件も2Dと同じですが、3Dに適合するように構成されます。 計算結果は、キャビテーション数σ= 0.3の図6bと6c(VOF法コンター図)と図7にプロットします。 これも、ADINAがキャビテーション流れの3D解析でうまくいくことをしめします。

(a)
(b)
(c)

図6 3D半球シリンダーのキャビテーション流れ: (a)概略図  (b)キャビテーション数σ= 0.3でのZGBモデルを使ったVOF法コンター断面図  (c)キャビテーション数σ= 0.3でのKunzモデルを使ったVOF法コンター断面図

図7 3D半球シリンダーキャビテーション流れの圧力係数(キャビテーション数σ= 0.3)

3つ目の解析事例は、NACA0015水中翼船の翼まわりの2Dキャビテーション流れです。 図8に概略図を示します。材料特性は表2に示します。 翼のコード長に基づいたレイノルズ数は1.09×106です。 このケースにおける、密度と粘度の割合は、それぞれ43391と110.6です この解析には、ZGBモデル([2]参照)を使います。キャビテーション数は1.0です。

図8 2DのNACA0015水中翼船の翼のキャビテーション流れ問題の概略図(正確な縮尺ではない) 翼のコード長はC=0.2m、迎え角は6°
表2 2DのNACA0015水中翼船の翼のキャビテーション流れ問題の材料特性

トップのアニメーションはキャビテーション流れの動的遷移状態が、水中翼の吸込み側の上面で明白に 観察することができます。 動的プロセスの典型的な特徴は、翼の前縁付近でキャビテーションが発生することです。 そして、蒸気泡は、小さな泡へ崩壊する前に、前翼面に沿って短距離を移動します。

ADINAは非常に大きな密度と粘度比のキャビテーション流れの的確な解析し、キャビテーショ ンのコントロールと減少が、どの部分で重要であるかを、多くの産業界に応用し役立てるために に利用することができます。

参考

  1. C. E. Brennen. Cavitation and Bubble Dynamics, Oxford University Press, 1995.
  2. P. J. Zwart, A. G. Gerber, and T. Belamri. "A Two-Phase Flow Model for Predicting Cavitation Dynamics", Proceedings of ICMF 2004 International Conference on Multiphase Flow, Yokohama, Japan, 2004.
  3. R. F. Kunz, D. A. Boger, D. R. Stinebring, T. S. Chyczewski, J. W. Lindau, H. J. Gibeling, S. Venkateswaran, and T. R. Govindan. "A Preconditioned Navier-Stokes Method for Two-Phase Flows with Application to Cavitation Prediction", Computers & Fluids, 29 (2000) 849-875.
  4. H. Rouse and J. S. McNown. "Cavitation and Pressure Distribution, Head Forms at Zero Angle of Yaw", Studies in Engineering, Bulletin 32, State University of Iowa, Iowa, 1948.

キーワード

CFD, cavitation, ZGB model, Kunz model, NACA0015 hydrofoil