階層モデルでの解析技術

2011.4.30 The Art of Analysis with Hierarchical Modeling

The Art of Analysis with Hierarchical Modeling

階層モデルでの解析技術

 

どんな有限要素解析でも、解析者の行う第一段階は、適した数理モデルの選択です。
ほとんどの解析は、この第一段階がもっとも重要で、また難しいと言われます。
適した数理モデルを選択するには、解析者が使用する数理モデルに精通している事
が必要です。具体的には、モデルの階層を知ることです。
 
複雑な異なる階層で、異なる数理モデルを考えれば、解析者のゴールは、解析の目
的を満たし、正しい結果得られる、可能な限りシンプルな数理モデルの選択です。
選択された数理モデルは、適切な有限要素を使った解析が必要です。
これは「有限要素モデル」と呼ばれています。
 
もちろん、「最良の有限要素モデル」の選択は、技術がいります。
このショーケースでは、簡易モデルで、適した要素選択の重要性を紹介しています。
そして、若干意外な結果も紹介します。
 
階層モデルのトピックスは以下論文に掲載されています
 
    K.J. Bathe, Finite Element Procedures, Prentice Hall, 1996, 
Chapter 1
Lecture 1 
 
そして、以下のより深く幅広く論じられた本が最近発行されました。
 
    M.L. Bucalem and K.J. Bathe, The Mechanics of Solids and Structures 
    - Hierarchical Modeling and the Finite Element Solution, Springer, 2011.
 
この本から以下に事例を示します。
 
1は最初の例題の概略図です。
長方形断面の片持ち梁構造は端面荷重により負荷がかかります。
目的は、中間位置の内部および支持部内部のせん断応力分布の評価です。
 
1、片持ち梁構造の概略図(l = 1.0, h = 0.1)
 
支持部には小さいRが使われています。(図2参照)
 
 
2、初期モデルの形状;鉄鋼(STEEL)は、剛体として考慮
 
2の物理的状況は、線形弾性体の平面応力の要素を使いモデル化しています。
モデルは、変位ベースの9節点要素を使い解析します。
モデル左辺上の全節点は、完全拘束します。
支持部に近い、微小なR部分には、非常に細かいメッシュを適用しました。
 
梁内部のせん断応力分布結果は、図3、4にしめします。梁理論で計算したせん断応力
分布と比較します。 
梁理論によれば、梁内部のせん断応力分布は、板厚方向に上面と下面で0、中心部で最
大となる、放物線を描くように変化します。
このように、中間位置での解析結果のせん断応力分布は、梁理論と良く一致します。
しかしながら、支持部でのせん断応力分布は、大きく異なります。
梁の上面と下面に近づく程に、高い応力勾配を示しています。
5に、高い応力勾配領域を拡大したグラフを示します。
 
3、中間位置でのせん断応力分布(有限要素vs梁理論)
 
4、支持部A部断面のせん断応力分布(有限要素vs梁理論)
 
5、高い応力勾配領域のせん断応力分布の拡大図
 
次に、この問題を改善した数理モデルを考えました、すなわち、剛体支持部をやめて、
代わりに鉄鋼支持をモデルに取り入れました。
6にモデルの概略図を示します。
 
6、鉄鋼支持とRの両方を取り入れた、改善モデル
 
7は、このモデルのA点での縦断面でのせん断応力分布を示しています。図8は、高い応力勾配
領域の拡大図です。
直感的に、アルミニウム梁の支持部の自由度が増すことにより、剛体支持よりはせん断応力は減
少すると予測します。
しかしながら、図4と図7で結果を比較すると、せん断応力のピークが増していました!
 
これは、アルミニウム梁が、鉄鋼支持に対して打ち付けられている事によるためです。
まだ、応力分布の分布状態は、変わっていませんでした。そして、
支持部近くのせん断応力分布は、梁理論を使う予測では、完全に間違いである事がわかりました。
7、支持部でのせん断応力分布(有限要素vs梁理論)
 
8、高い応力勾配領域のせん断応力分布の拡大図
 
もう一つの事例として、図9は、工作機の治具(ジグ)における興味深い解析事例です。
ここに、異なる複雑な数理モデルがあり、興味深い結果が得られました。
これらの解析と結果に関する詳細は、「M.L. Bucalem先生とK.J. Bathe先生」の本から参照できます。
上述の詳細解説や事例も掲載されています。
 
9、工作機の治具(ジグ)の概略図
 
10、工作機の治具(ジグ)の階層モデル
 
重要なポイントは、解析者が以下を注意する事です。
 
・使用する様々な階層の数理モデルの理解
・適したモデルの選択、そして
・信頼できる有限要素プログラムでの解析
 
実際のところ、一連のモデルは、線形構造の応答を含まれないだけでなく、熱や流体や電磁場
や非線形性の影響も解析する必要があります。
 
ADINAは、物理事象の増加していくより複雑な階層モデルを使用し解析するするために開発されました。
 ADINAは、構造解析、流体解析、熱伝導解析、電磁場解析とそれらの相互作用
(マルチフィジックス)と、広範囲にわたる解析が可能です。
 
工学と科学での解析は、ますます階層モデル化でのアプローチに向かって移行していく
でしょう。従って、大学にてこのアプローチが最良と教育されています。(参照)
 
キーワード:

階層モデル化、数理モデル、有限要素モデル、 信頼できる有限要素、構造、ソリッド、流体、温度、電磁場、流体-構造相互作用、マルチフィジックス、教育