手根管(しゅこんかん)症候群を理解するためのFSI解析
2010.6.15 FSI Analysis to Understand Carpal Tunnel Syndrome
FSI
Analysis to Understand Carpal Tunnel Syndrome
手根管(しゅこんかん)症候群を理解するためのFSI解析
ADINAの大きなアドバンテージの一つに、流体-構造の相互作用問題のモデル化が、構造と流体の
両方で的確に妥協なく、行えます。
構造では、あらゆる非線形性(幾何学非線形、材料非線形、境界非線形)を考慮できます。
流体では、一般的なナビエ-ストークス流体(非圧縮もしくは圧縮)を考慮できます。
構造の変形は、流体側に常に大きく作用します。ADINAは、効果的なALE方程式と、大きな変形に対応した流体領域にアダプティブメッシュを使います。これらの機能のすべては、1つのプログラム内で処理されます。それにより、エンドユーザーに作業効率アップとコスト削減をもたらします。
このページでは、これらの機能を用いた、興味深いバイオメカニクス問題の事例を紹介します。
研究のテーマは、手根管症候群(Carpal Tunnel Syndrome)の構造についてです。手根管は、手首の掌側にある狭い管の事です。
この管は、手の1つの主神経(median nerve)と指を曲げる9つの腱(けん)(finger flexor tendons)を保護しています。(図1参照)この主神経に圧力がかかる事で、シビレや痛みが起こる事を「手根管症候群」と呼びます。この症候群における機構のより良い理解は、将来的に療法を構成するうえで役立つと考えられます。
図1 手根管と手首の生体構造
図2に手根管の3次元の有限要素モデルを示します。形状はMRI(Magnetic Resonance Imaging)画像を使って、再現しました。要素は流体と構造の2つのモデルで構成されてます。
構造モデルは、正中神経と腱と手根管の壁で構成しています。流体モデルは、構造モデルが埋め込まれた、手根管内の流体を構成しています。(図2参照)[参考文献1]
図2 正中神経と腱、手根管の3次元有限要素モデル
モデルにおいて、構造は非圧縮性の粘弾性材料です。流体は、ニュートン流体でモデル化されます。
接触は、神経と腱の間、それぞれの腱どうしの間、神経と管壁の間、腱と管壁の間に設定されています。
接触オフセット機能は、ソリッド要素間の狭い隙間において、流体要素が潰れる事を防ぐのに使用されます。すなわち、流体メッシュを潰さないために、ソリッドとソリッドの間をオフセットにより隙間を維持します。
[参考文献1]
主神経と腱の変位量と変位方向は、MRIからの実データ基づいて、指定されます。(手の握り締め、手首の曲げ等)
非定常動的解析で、0.5秒の時間内を解析しています。この解析で、腱は大きく変形します。
流体領域は、構造の大きな動きに合わせて、各時間で再メッシュされます。
2次元と3次元の有限要素の両方の手根管のモデルは解析されました。[参考文献1,2]
2次元の結果において、腱の指定された動きは、手を握り閉める時を模擬したもので、図3,4に示します。
トップページのアニメーションは、手首の曲げの模擬での流体領域内の流速と、構造モデルのミーゼス応力と接触面圧を表します。[参考文献2]
図3は構造モデルのミーゼス応力の結果と流体モデルの圧力です。接触面圧をより高品質に表すために、構造モデルは四角形要素でメッシュされています。解析結果は、腱と管の壁の構造部どうしの接触による、主神経の受ける断面の変形です。そして、応力の高値が見られます。
図4は、流体内の流速ベクトルです。
図3 構造モデルの応力コンタ図と流体の面圧
図4 流速ベクトル図
この研究で、ADINA-FSI機能のいくつかの能力が挙げられます。
接触によるそれぞれの多重で自在な相互作用により、全てのモデルが流体に埋め込まれたなかで、変形します。
ADINA-FSIの詳細な情報は、流体と構造の相互作用のWEBページをご参照下さい。
私達は研究者がさまざまな流体構造相互作用問題を解決するのに、ADINA-FSIを使用した特徴や多く事例、および130以上の論文等を提供しています。
[参照文献]
1. C. Ko, T.D. Brown, "A fluid-immersed multi-body contact finite element formulation for median nerve stress in the carpal tunnel", Comput. Methods Biomech. Biomed. Engin. Vol. 10 No. 5, pp. 343-349, 2007.
2. J. Goetz, private communication
キーワード:
流体-構造相互作用、FSI、fluid-immersed、マルチボディーコンタクト、大変形、アダプティブメッシュ、手根管症候群、バイオメカニクス、特定患者、ALE
Courtesy of C. Ko, J.
Goetz and T.D. Brown, Department of Orthopaedics and Rehabilitation,
University of Iowa, Iowa City