レーザー堆積(たいせき)法の非線形熱伝導解析
2010.4.30 Nonlinear Heat Transfer Analysis of The Laser Deposition Process
Nonlinear
Heat Transfer Analysis of The Laser Deposition Process
レーザー堆積(たいせき)法の非線形熱伝導解析
ADINAは、固体や構造の様々な熱伝導問題をシミュレートするために幅広く使われています。
熱伝導、熱伝達、輻射、相変化、温度依存や時間依存の熱特性、要素の生成/消滅のような様々な解析オプションを用意しています。
熱伝導問題に加えて、多くの場の問題(例えば、浸透、電気伝導、静電場解析)も、支配している微分方程式と、熱伝導方程式間の類似性を用いてモデル化することができます。[参考文献1]
このニュースでは、ADINAでタングステン-炭化カルシウム-コバルト合金(WC-Co)のレーザー堆積による、空間と時間の温度分布の熱伝導解析例を紹介します。
この方法は、Laser Engineered Net Shaping (LENS(登録商標))からの例です。[参考文献2]
LENS法は、高出力レーザービームを集結させて溶解溜りを作り、そこに金属粉末を射出することでCADソリッドモデルから直接、金属と複合部品を製造できます。
3次元の部品を製造する際にレーザービームがワーク片に沿って移動することで、連続した層を次々に堆積させていきます。(図1)
堆積中にタングステンカーバイト(WC)はコバルトが相変化を起こしているため、溶解しません。
これは、重要な処理条件下で、不均質な微細構造が発生し、この合金固有な機械特性を生む原因になると言われています。[参考文献3]
図1 Laser
Engineered Net Shaping (LENS)法 の概略図
この解析(レーザー堆積法の3次元有限要素解析)の目的は、サンプル全体の温度履歴、つまりこのよう
な微細構造の形成に関するメカニズムで、より良い知見を得るためです。
堆積法の非定常熱解析では、WC-Co材の熱伝導率と比熱の両方が、温度依存になります。(図2)
このモデルでは、熱伝導の主なメカニズムが熱伝導になり、熱伝達と輻射の効果は、損失要因として近似的に考慮するだけです。コバルトの相変化中に必要な潜熱も考慮しています。
また、ADINAの要素生成/消滅オプションが、レーザーの熱源移動の役割をしています。
また、基板の金属はヒートシンクとして簡略して与えるものとします。[参考文献3]
上の動画は堆積法での温度分布を表しています。
二つのレーザー経路がWC-Coの新しい層を形成し、直前の層に重ねられます。この処理を繰り返します。各レーザーパスの終了後、新しいパスの開始に時間遅延があります。
図2. WC-Co合金の温度依存熱特性
(SS304はステンレス鋼で比較のために表示)[参考文献3]
実際の熱画像のような実験的手法で、レーザー堆積法での温度履歴を求めることもできますが、それは溶解溜り周辺の温度変化のみを求めているに過ぎません。
対照的に、3次元有限要素解析は、サンプル全体の温度変化を求めることができます。
図3は、ある時刻の3番目の堆積層における実際の熱画像と有限要素解析から得られた空間の温度変化を描いています。
これからわかることは、有限要素モデルは溶解溜り内では温度変化をかなりよく表していますが、溶解溜りから離れた範囲では、有限要素モデルは、実測と比較して温度がより急速に下がっています。先に言及した仮定による簡略化と実験結果の精度限界のためかもしれません。
図3.第3層での温度の実験と有限要素解析の比較[参考文献3]
図4は実測値と有限要素法の溶解溜り中心の温度と半径を比較したものです。結果はよく一致しています。
図4.溶解溜りの半径と溶解溜り中心の温度における、実測と有限要素解析結果の比較
[参考文献3]
有限要素による検証は、一つの層を堆積するとき、前の層の表面で再溶解が起き、前の層の下層部分で再加熱され、WC粒子が粗くなります。細く硬い粒子の成長の効果は低くなります。
これが、WC-Co合金の交互の下層における不均質な微細構造が発生する原因です。
ADINAの先進的な熱伝導解析機能は、モデルに熱源の移動、相変化、時間依存、温度依存の
熱特性が必要とされる多くの産業問題を解くために用いることができます。
もちろん、多くの解析(レーザー溶接、レーザークラッディング、表面効果、なども含む)で必要となる熱処理によって引き起こされる応力も計算することができます。流体流れも解析することもできます。
[参照文献]
1.ADINA Thermal Theory and Modeling Guide: ARD 09-8, May 2009
2.Two articles on LENSR: Wikipedia; Sandia National Laboratories
3.Y. Xiong, W.H. Hofmeister, Z. Cheng, J.E. Smugeresky, E.J. Lavernia, J.M. Schoenung, "In situ thermal imaging and three-dimensional finite element modeling of tungsten carbide-cobalt during laser deposition", Acta Materialia, Vol. 57, pp. 5419-5429, 2009
キーワード:
レーザー堆積、温度依存材料特性、要素生成/消滅、移動熱源、相変化、
Laser Engineered Net
Shaping (LENS)、ラピッドプロトタイピング、合金
協賛
Y. Xiong, E.J. Lavernia, J.M.
Schoenung (Univ. of California, Davis); W.H. Hofmeister (Univ. of
Tennessee Space Institute);
Z. Cheng (Earth
Mechanics Inc.); and J.E. Smugeresky (Sandia National Laboratories)